いつも人から舐められなくないと思っているアルマーニ黒田官兵衛課長

 ある夏の日下北沢のライブハウスで(今日はカップヌードルカレー味を買ってきた)アルマーニ黒田官兵衛係長は(亭主元気で留守がいいと思っている)鈴木京香ちゃんと知りあった。瞳がぱっちりとしてヘアースタイルはハードウェーブのスーパーロング、ミニのティアードスカートのよく似合うフェロモン全開の(メイクでは目力アップを心がけている)鈴木京香王妃である。(もりもり山のくだものアメではグレープが一番好きな)アルマーニ黒田官兵衛君はその時、(いつもスーパーの惣菜売り場をウロウロしている)鈴木京香王妃から名刺を受け取った。名刺にはその(手先が器用で何事も上達が早い)鈴木京香さんが働いている水商売の店の名前も書かれていた。
 すぐに彼はその店に行き、(ひょっとこ顔で人を笑わせることが得意な)鈴木京香様を指名した。しばらく(百貨店の屋上のアトラクション広場が大好きな)鈴木京香ママと楽しいお喋りをした後、(パソコンが重いので頻繁にディスクデフラグをしている)アルマーニ黒田官兵衛男爵は背筋を伸ばして、真剣な顔つきで(子供のいる友達のことをうらやましいなーと思っている)鈴木京香ママをまっすぐに見つめた。(困っている人を見ると放っておけない性格の)アルマーニ黒田官兵衛社長は(亭主元気で留守がいいと思っている)鈴木京香姫に大事な話があった。
 「すみません。鈴木京香ちゃん、がっはっはっは」
 「なんでしょう、アルマーニ黒田官兵衛先生、あっはっは」
 「単刀直入にいいます、にひゃにひゃにひゃ」
 「はい、どうぞ、えへへへ」
 「はいすみません。あのですね。えっと、誠に申しあげにくいことなのですがね、ずばりお尋ねします。気を悪くなさらないでいただきたいのですが……のっひょっひょっひょ」
 「なんなのでしょう!のっひょっひょっひょ」と(毎日自転車を乗り回している)鈴木京香王妃はイライラして叫んだ。
 「すみません、でははっきり申し上げます。鈴木京香ママ。ぽっくんと一生一緒にいてくれませんか?ごっひょっひょっひょっぶー」
 「……ぱーどん?にゃっにゃっにゃー、ひゃっひゃっひゃ」と(かくれんぼが大好きな)鈴木京香嬢は聞き返す。
 「ぼくちゃんは鈴木京香ママと結婚を前提にお付き合いしたいのです。なんとかお願いできないでしょうか!あっはっは」、アルマーニ黒田官兵衛殿は土下座してそう叫んだ。
 「結論から言いましょうか?ばっはっはっは」と(早く結婚したいと思っている)鈴木京香さんはつぶやいた。
 「はい、お願いします。おーっほっほっほっほっほー」と(メッシの凄さがあまりよく理解できない)アルマーニ黒田官兵衛課長はドキドキしながら答えた。
 「答えはノーですわ。ほほほほほほほ」と(ヘアケアーに力を入れている)鈴木京香ママは宣言した。
 (だめか……)、(電気代の節約のためエアコンはあまり使いたくない)アルマーニ黒田官兵衛さんはがっかりした。
 「そうですか。ご回答ありがとうございました。鈴木京香王妃。ではふたたびお尋ねしたいのですが、お金をお支払いしても難しいでしょうか?ぷへっひゃっひゃっぽーい」
 「ほお! お金ですか。おいくらほどでしょう?ひょっひょっひょっひょっひょー」と(休日は公園で遊んでいる)鈴木京香姫は身を乗り出して尋ねた。
 「もうしわけございません。僕はこういった取引に関しては不案内なものですから、ご迷惑をおかけしています。もしお金をお支払することで対応が可能なようでしたら、逆においくらで対応いただけますでしょうか? お見積りのほう、いただけませんでしょうか?ぶっ、ひひひ」
 「お見積りですか。なるほど!ひゃっひゃっひゃ」と(シロガネーゼになりたいと思っている)鈴木京香さんは叫んだ。
 (メイクでは目力アップを心がけている)鈴木京香王妃はジロジロと(今まで一度も食べたことがないインスタントラーメンを今度買ってこようかなと思っている)アルマーニ黒田官兵衛様を眺めながら長考した。やがて(ほんとうは理数系が好きだったが、その道は諦めた)鈴木京香王妃はいった。「100億ルーブル、というところですわ。くっくっくっく」
 (タブレットを買おうかどうか迷っている)アルマーニ黒田官兵衛部長はそれを聞いてがっかりした。
 「とっても高くてびっくりだ!だばははははははー」と彼は叫び、歯ぎしりをして悔しがった。
 「……了解しました。お見積りの方、サンクスでございました。しかしこのたびはこちらのほうの予算と、折り合いをつけることができませんでした。このたびはご縁がなかったという結果となってしまいました。では鈴木京香さんの今後のご発展をお祈りいたします。失礼いたします。がははは」
 そういって(インスタントラーメンが切れたのでまた買って来ようかと思っている)アルマーニ黒田官兵衛さんは泣きながら悪役プロレスラーとしての引退を決意した。