プライドがとても高いヴェルサーチ渡辺謙さん

 先日六本木のクラブで(世の中の流れについていけていないと感じている)ヴェルサーチ渡辺謙公爵は(家庭菜園が趣味の)来栖あつこ王妃と知りあった。愛くるしいタレ目でヘアースタイルはキュートなベリーショート、ミニのマーメイドスカートのよく似合うフェロモン全開の(どんな小さなお仕事も丁寧にこなす主義の)来栖あつこ女王である。(アイフォンのメール送信が遅くてイライラしたことがある)ヴェルサーチ渡辺謙専務はその時、(子供が働かず困っている)来栖あつこ嬢から名刺を受け取った。名刺にはその(果物が大好きな)来栖あつこ女王が働いている水商売の店の名前も書かれていた。
 すぐに彼はその店に行き、(先週は子供たちと一緒に品川の友達に会いにいった)来栖あつこちゃんを指名した。しばらく(笑顔は最高のお洒落だと思っている)来栖あつこ王妃と楽しいお喋りをした後、(昨日は久しぶりに風呂に入った)ヴェルサーチ渡辺謙社長は背筋を伸ばして、真剣な顔つきで(アイスクリームが大好きな)来栖あつこ嬢をまっすぐに見つめた。(今まで一度も食べたことがないインスタントラーメンを今度買ってこようかなと思っている)ヴェルサーチ渡辺謙係長は(都議会の女性蔑視のヤジは許せない)来栖あつこ女王に大事な話があった。
 「すみません。来栖あつこ姫」
 「なんでしょう、ヴェルサーチ渡辺謙リーダー」
 「単刀直入にいいます」
 「はい、どうぞ」
 「はいすみません。あのですね。えっと、誠に申しあげにくいことなのですがね、ずばりお尋ねします。気を悪くなさらないでいただきたいのですが……」
 「なんなのでしょう!」と(キラキラしたものが大好きな)来栖あつこママはイライラして叫んだ。
 「すみません、でははっきり申し上げます。来栖あつこさん。オレと毎日同じベットで寝てくれませんか?」
 「……ぱーどん?」と(何事も上達は早いがとても飽きっぽい性格の)来栖あつこ姫は聞き返す。
 「ぼくちゃんは来栖あつこ王妃と結婚したいのです。なんとかお願いできないでしょうか!」、ヴェルサーチ渡辺謙男爵は土下座してそう叫んだ。
 「結論から言いましょうか?」と(タレ目メイクがチャーミングな)来栖あつこさんは言った。
 「はい、お願いします」と(バカが付くほどの正直者の)ヴェルサーチ渡辺謙総理はドキドキしながら答えた。
 「絶対にムリですわ」と(麗しい)来栖あつこ様は宣言した。
 (だめか……)、(ファミリーマートの肉まんが大好きな)ヴェルサーチ渡辺謙総理はがっかりした。
 「そうですか。ご回答ありがとうございました。来栖あつこ姫。ではふたたびお尋ねしたいのですが、お金をお支払いしても難しいでしょうか?」
 「ほお! お金ですか。おいくらほどでしょう?」と(カリフラワーのような髪の毛の)来栖あつこ様は身を乗り出して尋ねた。
 「もうしわけございません。俺様はこういった取引に関しては不案内なものですから、ご迷惑をおかけしています。もしお金をお支払することで対応が可能なようでしたら、逆においくらで対応いただけますでしょうか? お見積りのほう、いただけませんでしょうか?」
 「お見積りですか。なるほど!」と(メイクでは目力アップを心がけている)来栖あつこ様は叫んだ。
 (アメリカンショートヘアーを飼っている)来栖あつこママはジロジロと(ツイッターでフォローされたら必ずフォロー返しをする)ヴェルサーチ渡辺謙大臣を眺めながら長考した。やがて(整形メイクが得意な)来栖あつこ姫は言った。「100億ドル、というところですわ」
 (地域密着のビジネスをもくろんでいる)ヴェルサーチ渡辺謙部長はそれを聞いてがっかりした。
 「スペースシャトル並みのお値段だ!」と彼は叫び、歯ぎしりをして悔しがった。
 「……了解しました。お見積りの方、ありがとうございました。しかしこのたびはこちらのほうの予算と、折り合いをつけることができませんでした。このたびはご縁がなかったという結果となってしまいました。では来栖あつこ様の今後のご発展をお祈りいたします。失礼いたします」
 そういって(毎日ツイッターでたくさんのツイートをしている)ヴェルサーチ渡辺謙総理は泣きながら姿をくらました。